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ハナちゃんといっしょ

ハナちゃんといっしょ

アメリカ一人旅・その1

2005年9月
ユナイテッド航空

●2年ぶりのアメリカへ●

8月31日から約1ヶ月間、私はアメリカを旅行した。滞在場所はシカゴ(8泊)、アリゾナ州(8泊)、オレンジ・カウンティ(4泊)、サンフランシスコ(8泊)だ。天気には恵まれたものの、広いアメリカの気候、気温は様々で、移動するごとに適応するのが意外に大変だったのだ。今日から少しずつ、1ヶ月に渡る一人旅の話を書いていく。

さて、出発の日。まずは福岡から成田に飛んだ。海外旅行は何度もしているけれど、成田から出国するのは初めてだった。ただっ広くて、着いた瞬間からもう迷っているし。私はものすごい方向音痴だ。旅行は一人のことが多いけど、今までよく生きてきたなって思うくらい。いんや、旅は迷うから楽しいんだぞ(説得力のない言い訳)。

まあ、そんなこんなで第1ターミナルにたどり着き、ユナイテッド航空で出国。前回はエア・カナダでアメリカへ行ったが、同じ北米系の航空会社でも雰囲気が全く違う。客室乗務員も人種も白人、黒人、アジア系と様々だ。ウーピー・ゴールドバーグのようなドレッドヘアのでっかい黒人女性もいた。日本じゃ絶対許されないだろうな、あの髪型は。

行きの飛行機はちょっと揺れが多く、何度もシートベルトの着用サインが出た。それでもトイレに行きたい人はいるもので、席を離れる人も多く、客室乗務員が座れ~と何度も連呼していた。私のすぐ近くに座っていた白人男性が立とうとしたら、おばちゃん乗務員が
「シートベルトを締めなさい!これはキャプテンのオーダーなのよ!」
と乗客を叱っていた。その白人男性、
「シートベルト、シートベルトって、ここは自動車の教習所か?」
ってぼやく。まわりの乗客、笑っていたし。ついでに私も。

そしてシカゴ、オヘア空港に到着。入国審査が微妙に厳しくなっている感じがした。質問自体はどれくらいの期間アメリカに滞在するかだけだったけど、両指の指紋をとられ、目の写真をとられた。とても優しい入国審査官のおじさんで、
「シカゴへようこそ、いい旅を」
と言ってくれた。気持ちよく入国。

さて、これから市内までどうやっていこう。地下鉄がいちばん速くて安いけど、10キロ以上のバックパックを背負い、長旅で疲れている私にそんな気力はなかった。若い時なら無理をしてでも安いほうを選ぶけど、30代半ばにもなると無理はしたくない。タクシーは高いに決まっているので、シャトルバスに乗ることにする。値段を聞くと25ドル。ちょっと高いと思いつつ、まあいいかと思い乗車。目の前に迫り来る高層ビル群を眺めながら、どんな一人旅になるのかドキドキしていたのだった。

●建築と芸術の町●

シャトルバスで宿泊先、ホステリング・インターナショナル・シカゴに着く。いわゆるユース・ホステルだ。友だちと一緒のときはホテルや、ホステルでも個室に泊るが、一人の時はドミトリーに泊る。気が滅入った時や寂しい時に話し相手がいるし、友だちもできるからだ。日本からインターネット予約をしていたので簡単にチェックイン。

部屋は6人部屋。障害者も使用可の部屋だったので、トイレとバスが別で、それぞれ広々としていた。部屋の目の前には高架鉄道が通っていて、かなりうるさい。確かにきれいな部屋だけど、騒音を考慮に入れたら1泊30ドルは高すぎ(といっても、シカゴのホテルはどこも高いのだ)。ベッドは自分では選べない。こんなの初めて。おまけにスタッフは事務的でフレンドリーという言葉から程遠い。まあ、シカゴでフレンドリーな人を見つけるほうが難しかったのだけど。

荷物を降ろしてホッとしていると、メキシコ人姉妹が入ってくる。彼女たちもこの日にシカゴに着いたばかりだ。マルセラとダーニャ。マルセラはスペイン語訛りのほとんどないきれいな英語を話した。ダーニャはちょっとシャイで、スペイン語でお姉さんとしか話さない。ダーニャが私に時間を聞きたかったみたいだけど、それもマルセラを通じてだ。マルセラに英語で
「自分で聞きなさいよ」
と言われていた。それでもシャイなダーニャは笑顔で沈黙。

眠たかったけど、シカゴに着いたのは昼の2時過ぎ。ここで寝てしまっては時差ボケになると、町を歩くことにした。軽い空腹を覚えたので、1階のカフェでトマトスープを食べる。シカゴにきて初めての食事だ。

ホステルはダウンタウンの南にあり、メインの通りのミシガン・アベニューのすぐ近く。ホステルのあるところはちょっと薄暗い感じがしたが、大通りに出れば意外とこぎれいで高層ビルの建ち並ぶ町に出る。通りにはカフェが並び、観光バスが走っていた。いちばん行きたかったシカゴ美術館も簡単に見つけることができた。

シカゴはアメリカの中でも歴史があり、建築物もユニークだ。シカゴ建築ツアーっていうものあるらしい。あらかじめガイドブックで見たようなビルが目の前に立ちはだかっている。また、町のいたるところでユニークな芸術作品が見られるけど、それもピカソ、ミロ、シャガールといった巨匠の作品が普通に立っているのだ。すごすぎる。

シカゴはアジア系の人が少ない。まばらにしか見当たらないのだ。そして、黒人がとても多い。北のほうなんだけど、やっぱり都会だからだろうか。でも、マイケル・ジャクソンもシカゴ出身だったような気がする。アジア人は南のほうにあるチャイナ・タウンや韓国人街に住んでいるんだろう。チャイナタウンより南は治安が悪いらしい。凶悪犯罪もほとんどその地域で起こるのだそうだ。

早々とホステルに戻り、翌日チェックアウトだというロシア人の女の子とずっと話していた。小さくてラブリーな子だったけど、アメリカで心理学を勉強するために3ヶ月留学していたのだそうだ。彼女もロシア語訛りのない英語だった。この日のルームメイトは彼女とメキシコ人姉妹。いい人たちでよかった。

8時くらいにすーっと眠りについたのだけど、夜中の12時くらいに目が覚めてしまった。ベッドのマットレスが柔らかすぎるし、いったん目が覚めたら高架鉄道の音と光が気になって眠れない。結局眠りについたのは3時くらい。これからしばらく眠れない日が続くのだった。

ホステリング・インターナショナル・シカゴ(Hosteling International-Chicago)
www.hichicago.org

●シカゴ美術館●

9月1日、アメリカ旅行2日目。寝つきが悪かったためか、目が覚めた時は10時。もう少し寝ていたかったけど、起きて出かけることにする。目的地はシカゴでいちばん行きたかった場所、シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)だ。

シカゴ美術館といえば、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)、ボストン美術館と並ぶアメリカ3大美術館で、印象派と20世紀アメリカ美術のコレクションで特に有名らいしい。ほかにもアフリカやアジアの美術と工芸品、ヨーロッパの装飾美術など充実していた。私は印象派の作品とアフリカの工芸品などが大好きだ。私が訪れた時、「ロートレックとモンマルトル」という特別展が催されていた。午前中は常設展を、午後は特別展を見ることにした。

まずはアフリカの美術・工芸品から鑑賞。続いて中国、日本、朝鮮半島の工芸品を鑑賞。アフリカのコーナーはなかなかおもしろかったが、中国や朝鮮半島は陶磁器がメイン。実はこれにはあまり興味がない。でも、中国の陶器はけっこう興味深かった。お葬式や日常生活の様子を焼き物で表現している。この展示室を回るだけでけっこう疲れてしまった。

続いてヨーロッパの美術作品へ。古い宗教画にはそれほど興味がないけど、とりあえず見て回る。メインはやっぱり19世紀末から20世紀初頭にかけてのヨーロッパの絵画だ。モネだけでも何点あるんだってくらい、ものすごく充実している。有名な絵画では、スーラの『グランド・ジャケット島の日曜日の午後』、ドガの『出番を待つ踊り子たち』、ゴッホの『アルルの寝室』、『自画像』などなど…。ほかにもゴーギャン、セザンヌ、ミレー、ピカソ、ゴヤ、シャガール、ピサロなど名の通った画家の作品が多数展示されてある。

20世紀のアメリカ美術にはそんなに興味がない。とりあえず、有名なウッドの『アメリカンゴシック』だけは見ておきたいと思ったものの、この作品は別の美術館に貸し出し中だった。ガーン。

小腹がすいたので美術館のカフェで食事を取ることにした。ルーベン・サンドイッチを注文する。どうでもいいけど、ここの店員も愛想がない。シカゴはたいていそんな感じだったけど。ルーベン・サンドイッチは炒めたハムと酸っぱく味付けされたキャベツのサンドイッチだ。おいしいのだけど量が多い上に油も多い。サンドイッチの下にはフレンチ・フライがドカンとあるし、マヨネーズの多いコールスロー。それでなくても腹を壊しやすいので、全部は食べられなかった。

午後はロートレックの特別展へ。有名なロートレックの『ムーラン・ルージュにて』はいつもは常設店で展示をされているが、今回は特別展で見ることができた。実はそれまでロートレックにはあまり興味がなかった。ポスターがくらいしか見たことがなかった。ほかの印象派と違い、彼の描く絵は劇場、女優、酒場が主で、彼自身もお酒の飲みすぎで肝臓をやられ、35歳の若さで亡くなったという。華やかな時代を自堕落に生きた(かどうかは知らないが)ロートレックに少し興味を持った。

ロートレックの作品のほか、同じ時代を生き、パリやムーラン・ルージュを描いた画家、彼と交流のあった画家たちの作品も展示されていた。

いったい何時間この美術館の中にいただろうか。たぶん、全てを見切れていないような気がするが、とにかく疲れてしまった。それくらい展示品が充実しているということなのだ。

シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)
www.artic.edu

●オアシス●

シカゴは、ニューヨーク、ロサンゼルスに次いでアメリカ第3の商業都市だ。ダウンタウンには、見上げると首が痛くなるような高層ビルが立ち並ぶ。観光都市というよりはビジネスの町というイメージが強い。歩く人もなんだか忙しそうだ。

しかし、この大都会には市民の憩いの場となる公園がとても多い。リンカーン・パーク、ハイド・パークなどの大きなものから、シカゴ美術館に隣接している小さな公園など大小さまざまだ。その小さな公園はミシガン・アベニューの大通りに面しているのに、木々で囲まれていて静かで、小鳥の鳴き声なんかも聞こえる。おまけに、リスが走り回ったりなんかしている。ここで昼寝をしたり、コーヒーを飲みながら話をしたり、ビジネスマンもテイクアウトのランチを取ったりなんかしていた。

その隣に2004年の秋に新しくできたミレニアムパークがあった。シアター、スケートリンク、彫刻、ちょっと変わった噴水から成る複合公園だ。公園内には小さな小川の流れるブッシュなんかもある。噴水(Millennium Fauntain)は高さ15メートルのツインタワーから水が流れ落ちている。タワーの表面には人の顔が大きく映し出されているのだ。タワーの間はちょっとした池になっていて、家族連れや子どもたちが水遊びを楽しんでいた。

公園内を散歩していると、巨大な銀色のオブジェを発見。人が回りに集まっているので、何かあるのかと思うけど、特に何もない。内部に入ることもでき、天井に自分の姿が移っているのが分かる。豆粒のように小さいのだけど。この巨大彫刻は形からジェリー・ビーンズと呼ばれ、高さ9m、長さ10m、重さ100tなのだそうだ。イギリス在住のインド系美術家の作品。曲がった鏡のように、歩く人、周囲の景色が映し出されていた。
こんな感じ。
jelly beans

ほかの場所を訪れた時にも思ったけど、外国の大都市はところどころに市民のくつろげる場所がある。カフェや娯楽施設ではなく、緑の多い公園だ。日本にもあるのかもしれないけど、まずリスは出てこないだろう。

さて、その夜は昼に食べたルーベン・サンドイッチでお腹いっぱいで、晩ご飯はリンゴのみ。わたしゃサルか?それでも胃が気持ち悪くて眠れなかったのだ。ちなみにこの日のルームメイトはメキシコ人姉妹のマルセラとダーニャ、フレンチ・カナディアンのクリスティーナ、オーストラリア人のローズ、ドイツ人のアンカ。みなさん夜は静かで大助かり。いや、それが普通。

ミレニアムパーク(Millennium Park)
www.877chicago.com

●夜のシカゴ●

9月2日、アメリカ旅行3日目。メキシコ人姉妹ともこの朝お別れ。マルセラはいい子で、私たちは短い間だったけどよく話した。お互い、メールアドレスを交換した。

この日は町中にある巨匠たちの芸術作品を見ようと出かけるが、なんだか体が疲れてしまっていた。連邦政府センター前にある、カルダー作の『フラミンゴ』だけ発見。芸術作品については後日。マックでシーザーサラダを買い(これがまたでかい上に、チキンまでドカンと乗っている)、シカゴ美術館の隣の公園でランチ。それからホステルへ帰り昼寝をした。

夜はドイツ人の友人、カーステンに会うことになっていた。彼はシカゴから車で1時間のシャンペンという町に住み、大学でドイツ語を教えながら博士課程を取っている。夕方6時半にレイク・ストリートの地下鉄駅入り口で待ち合わせる。地図を見ると近いので歩いていく。金曜日なので人通りも多い。ビルの谷間に夕陽が沈んでいくのがとてもきれいだった。

5分遅れて到着すると、カーステンはもう待っていた。全然変わっていない。ちょっと太った感じがした。彼の大学の友だち、アメリカ人のショーンも一緒に来ていた。2人は背丈、服装も似ていてなんだか笑えてしまった。

夕食はシカゴ名物のピザを食べに行く。シカゴといえばピザなのだ。シカゴのピザは大きい、というかすごいボリュームなのだ。普通のピザは薄いけど、シカゴピザはまるでパイかケーキのような厚みがある。生地もしっとりしていて柔らかいのだ。ジョルダーノス(Giordano's)という有名店へ行くが、週末だけ会ってすごい人。テーブルにつけるまで1時間くらい待った。その間町を散策したりした。

私が食べたいものってことでチーズピザを選び、トッピングはトマト、マッシュルーム、ソーセージ。そして出てきたピザのでかいこと!1切れで十分お腹いっぱいになったけど、無理して2きれ食べた。味もなかなかのもの。
これがシカゴピザ。左端にショーンも写っています。
シカゴピザ

食後はジョン・ハンコック・センター(John Hancock Center)でシカゴの夜景を見に行く。最上階に上るには10ドルかかるらしく、それなら最上階じゃなくとも、ビルにあるバーでお酒を飲みながら夜景を楽しむことに。もう、メチャメチャきれい!ワインを飲みながら2人の男性に囲まれて(例えいい男じゃなかろうとも)夜景を見る、なんて贅沢な。それも、ショーンのおごり(食事も)。ああ、いい夢見させてもらいました。
シカゴ夜景

しかし、私はその後ダウンタウンに置き去りにされたのだ。彼らの泊っているホテルのある通りに着くと、2人は私に地下鉄に乗って帰ることを勧めた。え?夜の10時半だよ?送ってくれないの?地下鉄に乗るほど遠くはないし、南方面へ向かうレッド・ラインの治安はよろしくない。歩いたほうがましだ。はい、歩いて帰ったわよ、怪しい人がうろついているのを横目に。こぶしを握り締めて、襲われたらいつでも殴れるような体勢で。無事に帰りついたけど、なんて男たちだ!

その夜はすぐに眠りにつけた。しかし、夜中にチェックインしてきた2人組み、うるさいわ、明かりをつけるわ、部屋中の人みんな目覚めてしまった。ドイツ人のアンカが明かりを消せって2人に注意していた。えらいぞ、アンカ。

というわけで、翌日もカーステンと会うことになる。なかなかおもしろかったわよ~。いろんな意味で。

ジョン・ハンコック・センター(John Hancock Center)
www.hancock-obsaervatory.com

●臆病な男●

9月3日、アメリカ旅行4日目。10:30にカーステンとレイク・ストリートで待ち合わせる。ショーンはほかの友だちと会うのでこの日はカーステンと2人だ。日本語だけで話せるので楽だけど、前晩の置き去りで私の機嫌はちょこっと斜め。でも、これで会うのも最後かも?と、頑張って作り笑顔のいい人に変身。

ネイビー・ピア(Navy Pier)まで歩いて行き、ミシガン湖のクルーズを楽しむ。本当はシカゴ川から乗りたかったけど、彼的に料金が高いと感じたようだ。60分から90分で19ドル、ネイビー・ピアでは30分12ドル。まあ、私は払ってないからどっちでもいいんだけど。昨日のことがあったので、財布は一切出すまいと決めていたのだ。

ネイビー・ピアは1916年に造られ、水上の要所として栄えたが、後にアメリカ海軍の訓練所となる。現在は遊園地、博物館、コンサートホール、ショッピングモールなどが立ち並び、老若男女が楽しめる娯楽施設となっている。

さて、ミシガン湖クルーズだけど、ネイビー・ピアの湾内をぐるりと1周するだけの簡単なもの。それでも初めて見るミシガン湖は美しくて、大きくてまるで海のよう。湖上から眺めるスカイラインも美しかった。カーステンは疲れていたようでずっと目を閉じていた。楽しいのか?お前は。まあ、私はかまわず写真を撮っていたけど。
右側に見えるのがネイビー・ピア
ミシガン湖

小腹がすいたのでハーゲンダッツでアイスクリームを食べる。キャラメルとバナナの入ったもので値段も安くない。私は払ってないけど。それにしても甘いの何の、全部食べられなかった。

ダウンタウンへ戻り、前晩も歩いたマグにフィセントマイル(Magnificient Mile)をウィンドウショッピング。東京でいう銀座ってところだ。デパート、レストラン、ギャラリーなんかが立ち並んでいた。週末なので人もたくさん。Talbotっていうデパートのフードコートで海苔巻でランチ。ここでもカーステンが払っていたけど、なんだかかわいそうになったので4ドルあげた。喜んでいたよ、ヤツは。

このカーステン、とても怖がり屋の臆病だ。高いところ、心霊的なもの、大きな音、怖そうな人…。昔から気が小さく、いつも何かを怖がっていた。今回も変わらず。前の晩に行ったジョン・ハンコック・センターのスカイバーでは、きれいな夜景の写真を撮りたいんだけどガラスに近づけない。ガラスからかなり離れて写真を撮っていた。ショーンが
「彼は高いところが嫌いなんだ」
と、私にそっと耳打ちをした。

ランチを取ったデパートでもそう。フードコートは最上階にあるが、ガラス張りのエレベーターを使わない。ひたすらエスカレーターで昇っていくのだ。映画で見るようなアメリカのデパートに、私がすっげーと下を見をろしていると、目を覆っていた。

高所恐怖症なら私もまだ気持ちがわかる。人通りの少ない薄暗い道、これも怖がるがまあ、気持ちはわからないでもない。でも、怪しい人もいないのに早足になり、私の歩くペースを気にせずさっさと行ってしまうのだ。ホームレスや物乞い、目つきの悪いゴロつき風を見ても同じ。私は警戒しながらもそういう人たちの前を普通に歩く。しかし、カーステンは小走りに近い早足で、その周辺を大廻りして行くのだ。返って不自然。もちろん、私を置いて。これで私に惚れていただなんて、とても信じられない。

よく言えば用心深いのだろうけど、私から見れば極端極まりない。これで一人でアメリカに住んでいるのだからな。これくらい気をつけなければいけないってことだろうか、外国に住むってことは。

昼の2時ごろにカーステンとお別れ。
「長い時間一緒にいられなくてごめんね」
と彼は言ったけど、いやいや、もう十分だよ。
「今度シカゴに来たら、ぜひ僕のところに泊ってね」
と言った。にっこりして「OK」だなんて言っておきながら、腹の底では「嫌だね~」と舌を出す私。2回もハグをされてしまったぞ。いつの日か、またどこかで会うことがあるのだろうか。

ネイビー・ピア(Navy Pier)
www.navypier.com

●科学産業博物館●

9月4日、アメリカ旅行5日目。シカゴで一番人気のアトラクションだという科学産業博物館(Museum of Science and Industry)へ行くことにした。なんと、年間450万人もの来館者があるそうだ。期待が膨らむ。

博物館へ行くには歩くには遠すぎるし、治安の悪い地区を通らなければならない。ホステルの前にちょうどこの博物館行きのバスが通っていたのでバスで行くことにした。シカゴは乗り物の中で犯罪もしばしば起きるという。だから、バスのドライバーは体がでかくて強そうな人が多いらしい。確かに強そうだった。縦も横もめっちゃでかい黒人の…お姉さんだった。

さて、博物館に着いたものの、この日は日曜日。おまけにBody Worldという人気の特別展覧会もやっていたので恐ろしいほどの人出だ。シカゴに着いてワシントンDCに住む友だちのマーガレットに電話をしたとき、彼女がこの特別展を見ることを勧めてくれた。しかし、このチケットはもう売り切れ。夜の11時からの分なら見れるって言っていたけど、そんな時間、バスが通っていない。あきらめる。

常設展だけでも75のフロアに2000点以上の展示だというのだから、見ごたえがあるはずだ。ところが、残念ながら私は産業に関しては全くと言ってよいほど興味がないのだ。たぶんメインはドイツ潜水艦U-505の展示だろうけど、興味がなければふ~んのレベル。戦争に関する展示だけはしっかり見てきたのだけど。

科学に関してはまあそれなりにおもしろかった。特に人体に関する展示、ここでは人体のホルマリン漬けスライスを見ることができるのだ。ひょえ~だった。

それから、受精から生まれる直前までの胎児の成長が40の段階に分けて順を追って見られる。事故や病気などで亡くなった方の胎内にいた赤ちゃんのホルマリン漬けだ。8週目でもう人間の形をしているのだからすごい。小指の大きさもないのに。私の前にいたおばちゃん、小さな子どもに胎児の成長過程について説明しているんだけど、いちいち
「This baby is so cute!」
なんて言っていた。ホルマリン漬けの胎児がかわいいか?確かにお勉強にはなるのだけれど…。

ほかにも心臓や脳の仕組み、血液の働き、エイズに関する展示など充実はしていた。しかし、いちばん人気のアトラクションというのはちょっと首を傾げてしまった。人も多いしとっとと帰る。帰りのバスも同じドライバーのお姉ちゃんだった。

科学産業博物館(Museum of Science and Industry)
www.msichicago.org

●ジャズを楽しむ●

科学産業博物館から戻りホステルの部屋でのんびりしていると、新しいルームメイトが2人入ってきた。韓国人のユミとドイツ人のフラウケ(日本に住むドイツ人の友だちと同じ名前!)。2人ともお話好きないい子たち。ユミは語学留学で1年アメリカに住み、今度はシカゴの学校に移るのでしばらくはホステル住まいをしながらアパート探しをするのだそうだ。フラウケはアイオワ州のワークキャンプに1ヶ月ほど参加、その後シカゴを観光してドイツに帰国すると言っていた。

さて、私がシカゴを訪れた時、ちょうどジャズ・フェスティバルが行われていた。年に一度の大きなイベントのひとつだ。ジャズはあまり聴かないし、夜間の外出はしないようにしていたのでもう行くこともないだろうと思っていた。行った人は口をそろえてよかったと言っていたのだけど。

韓国人のユミはシカゴに来たからには見に行きたかったようで、私を誘った。私は一度は断ったのだけど、二度目に誘われた時はOKした。一人じゃないし、野外コンサートなんて楽しそうだから。それにユミが叔母さんの作ったというおいしい韓国料理をふるまってくれたので…。食べ物に弱い私だった。

外も薄暗くなり始めて私たちは外出した。会場はすぐ近くにあるグラント・パークだ。会場の門をくぐるとたくさんの屋台が並んでいる。どこから来たのってくらい、たくさんの人。私たちはお腹がすいていなかったけど、大きなアイスクリームを持っている人を見てそれを食べたくなった。現金では変えない。7枚綴りの引換券が11ドルで売られていたので、それを購入。アイスクリームは4枚のチケット。ちょっと高くない?しかし、でかいアイスクリームだった。

アイスクリームを食べながら会場に入る。料金はかからないが、カバンの中などをチェックされて、手にスタンプなんか押された。席に着くとまもなくジャズバンドの演奏が始まる。軽快な曲からムーディーな曲まで、いろんなジャズを聴かせてくれた。今までジャズといえばホリー・コールくらいしか聴かなかったけど、バンドの演奏もなかなか素敵だ。それも生演奏なのだ。

私たちの前の列には、黒人の親子3人(お父さん、おばあちゃん、十代の娘、この子がすごくかわいかった!)、そして白人男性とアジア系女性(たぶん日本人)のカップルが座っていた。黒人親子はリズムに乗って音楽を楽しんでいたけど、カップルはしゃべりっぱなし。特に男性の声がでかいのなんの。黒人パパはそれを時々ちらちら見ていたけど、ついにはブチ切れてしまい、
「黙って聴かんかい、このボケナス」
と怒鳴っていた。カップルはまもなく立ち去る。そうだね、野外コンサートでもマナーは守らなくては。

まだコンサートは続いていたけど、遅くならないうちに私とユミは会場を後にした。私は彼女にジャズをあまり聴かないと言っていたので、ユミは
「どうだった?気に入った?」
と聞いてきた。もちろんだ。ジャズがこんなに楽しくていいものだとは思わなかった。日本に帰ったらジャズを聴き始めようって思ったくらいだ。本場アメリカでCDを買えって感じなんだけど(笑)。

素敵な音楽と程よい疲れで、その日はぐっすり眠れそうだったけど、巨大アイスクリームが腹の中で暴れていたのだった。

シカゴのイベント情報
www.877.chicago.com
www.cityofchicago.org→上のほうにあるEventsをクリック

●街中がアート●

9月5日、アメリカ旅行6日目。2年前にシアトルへ行ったとき、街中にいろんなオブジェが立っていて、シアトルほど芸術的な町はないと思っていた。しかし、シカゴはそれ以上だ。歴史的な建物からちょっと変わった姿をした超高層ビル、これだけでもダウンタウンを歩いていると楽しいのに、超有名な芸術家たちによる作品が、普通に街角に立っているのだ。街全体がミュージアムなのだ。ガイドブックに載っていた全てのアートにはお目にかかれなかったが、見たい作品が見られたので大満足。

3日前に見たものは、カルダー作の『フラミンゴ(Flamingo)』。連邦政府センタープラザの前にある、重さ50t、高さ53フィートのでかくて真っ赤なオブジェ。

ここからこの日に見た作品4点。大好きなシャガールのモザイク壁画、『四季(The Four Seasons)』。バンクワン銀行の前にある。
シャガール

あとの3点はそれぞれ近い場所にあったので見つけやすかった。ミロによる『ミロのシカゴ(Miro's Chicago)』はブラウンズウィックプラザにある。ビルの谷間に37フィートの女性像が立っている。その向かいのデイリープラザの前には、ピカソがシカゴに贈った彫像『無題(untitled)』が見える。女性に見えるだとか、犬に見えるだとか言われているらしいけど、私にはサルに見えた。映画、『ブルース・ブラザーズ』にも登場したらしい。
左がミロ、右がピカソ
ミロ ピカソ

最後に州政府ビルに立つデュビュッフェによる『起立した野獣へのモニュメント(Monument with Standing Beast)』を偶然発見。よくわからない形の像だった。

さてさて、歩き回った後には腹が減る。マグにフィセントマイルにあるTalbotのフードコートを再び訪れる。とにかく米の飯が欲しかった。先日海苔巻を食べた、Little Tokyoという日本食のスタンドへ。チャーハン、野菜と鶏肉を甘辛く炒めたもの、生野菜のサラダを食べるが、見ても食べても日本食とは程遠い。おいしかったのだけど。

午後はグラント・パークへ行き、バッギンガム噴水の近くの木の下で、レーズンをかじりながらのんびりした。祝日だったのでたくさんの人だった。この噴水もなかなかきれいなのだ。

夜はシカゴの近くに住む友だちのダニエルに電話をしなければならなかったけど、なかなか通じない。キッチンのテーブルでユミ、フラウケと話をしながら過ごす。電話が通じたのは11時前だったのに、2人とも私にずっと付き合って話していてくれた。いい人たちで感謝だった。この晩はよく眠れた、やっと!

●スパータス博物館●

9月6日、アメリカ旅行7日目。この日から2泊、シカゴの近郊に住む友だちのダニエルのところに泊ることになっていたので、10時半頃ホステルをチェックアウトした。荷物を預け、午前中はホステルのすぐ近くにあるスパータス博物館(Spertus Museum)を見物することに。

スパータス博物館とは、ユダヤ美術専門の博物館で、ユダヤ人の遺産が展示されている小さな博物館だ。アメリカ中西部ではユダヤ人に関する博物館の中で最大規模だというが、こじんまりとしていて展示品もそこまで豊富ではない。お客もいない。なんと、私一人だけだった。

入館すると、展示箇所は4箇所だという。1階、2階、3階そして6階だっただろうか。1階の受付前は資料程度の展示だった。2階にはユダヤ教の成人式、結婚式、祭りなどの儀式で使われる道具、聖典、美術品などが展示されていた。ユダヤの文字はヘブライ語だろうか、もちろん読めない。

3回の展示室はホロコーストに関する展示。ここがいちばん見たかったところだ。迫害、虐殺された人々の遺品、収容所で身に付けていたものや道具が展示されていた。シカゴまで生き延びてきた人の古いカバン、無残にも殺された小さな女の子の片方だけ残された靴、迫害の証の腕章など、数は多くないが見ていてやっぱり少しだけ暗い気持ちになる。

6階は資料室に図書館、ユダヤ人のコミュニティーセンターがあったけど、特に見るものがなかったのでその場を去る。ユダヤ人のコミュニティって、どこにでもあるのだろうか?アリゾナ州のトゥーソンにも大きなユダヤ人センターがあったことだし。

これは後日、カリフォルニアでデイナ(私の友だちのマーティンのお姉さんのルームメイト)というアメリカ人女性に聞いた話。ユダヤ教の結婚式の後、新婚夫婦はなんと、新婦のお母さんの監視のもとで新婚初夜を迎えるのだそうだ。どっひゃーだ。フランスとか昔のお貴族様にはそういう風習があったっていうのは聞いたことがあったけど、ユダヤ教にもあるのね。今もだろうか。もしそうだったら、ユダヤ人男性とは結婚できませんね。もしくはこっちの習慣に合わせてもらうとか。余計な心配事でした…。

スパータス博物館(Spertus Museum)
www.spertus.edu

●フィールド自然史博物館●

午後は歩いてフィールド自然史博物館(Field Museum of Natural History)へ向かう。バスでも行けるのだが、歩いても20分くらいだ。この博物館があるグラント・パークの南には、行きはしなかったけどジェッド水族館、アドラープラネタリウム&天文学博物館があり、ちょっとしたアカデミックな場所だ。周辺ではキャッチボールをしたり、ジョギングをしている人たちを見かけた。警官が馬に乗ってパトロールなんかもしていた。

ここは世界でも屈指の自然史博物館らしい。しかし、科学産業博物館でちょっとがくーってきていたのであまり期待をしないで見ることにした。しかし、私は間違っていた。もう、ほんの1,2時間では見切れないくらい広くて、展示品も充実しているのだ。はっきり言って迷路状態。そういえば、ルームメイトのフラウケが4時間かけて見たと言っていた。ちなみに、私は5時間半かかってしまったのだ。

いちばんのアトラクションといえば、メインレベルの中央ホールにででーんと立っているT-Rexのスー(Sue)の化石だろう。現在発掘されているT-Rexの化石の中で、世界で最大、かつ完全に近いものなのだそうだ。1990年にサウス・タコダ州で発掘されたもので、長さ12.8m、高さ4m、体重は7t(推定)あったとされる。中央ホールにあるものは頭蓋骨の部分はレプリカで、本物は2階に展示されている。でかいよ。
自然博物館

とにかく、ここの展示物はこの場で書ききれないくらい充実していた。世界のいろんな動物(哺乳類から昆虫まで)のはく製や模型、自然保護、アフリカ系アメリカ人の歴史の再現、世界の植物、アメリカ先住民に関する展示、古代エジプト、太平洋の島々の道具や美術品…。それも時間をかけてゆっくり見学したいものだった。日本に関する展示も少しだけあった。ここはシカゴに行ったら、シカゴ美術館とともにぜひ訪れて欲しいスポットだ。

グラント・パークを散歩しながらダウンタウンへ戻る。バッキンガム噴水には虹が架かっていてとてもきれいだった。
バッキンガム噴水

さて、ダニエルと会う約束をしていたのは5時半。彼女がホステル前まで迎えに来てくれることになっていた。5時ごろに荷物をピックアップしてホステルの前で待つが、待てども待てども彼女は来ない。そこへユミとフラウケが帰ってきた。なんとも優しい彼女たち、私と一緒にダニエルが来るまでずっと話していてくれたのだ。本当にいい人たちだった。しかも、ユミは携帯電話まで貸してくれたので、ダニエルに電話もかけることができた。無事にダニエルに会えたのだけど、続きは次のページで!ありがとう、ユミとフラウケ(2人の連絡先を聞き忘れたバカな私)。

フィールド自然博物館(Field Museum of Natural History)
www.fieldmuseum.org

●ダニちゃん、1年ぶり!●

7時を過ぎて、やっとダニエル(Danielle)が迎えに来てくれた。髪を真っ黒に染めていたので気がつかなかったけど、確かにダニエルだ。1年と2ヶ月ぶりの再会だ。

ダニエルと出会ったのは3年前の夏だ。来日したばかりの彼女はあまりしゃべらず、ちょっとお高くとまっているような感じがして、最初はとても苦手だった。しかし、空手を一緒に稽古したり、共通の友だちと遊びに行ったりするうちに、彼女は気が優しくて涙もろい子だということがわかってきた。1年後に彼女が去る頃には、とても仲良くなっていたのだ。日本を去って1年後、彼女は大学院の論文を仕上げるために再び来日。その時通訳のお手伝いとして彼女と京都で再会した。というわけで、彼女とは毎年会ったりなんかしているのだ。現在はシカゴ郊外の日系企業で日本人と一緒に仕事をしている。

さて、ダニエル一人で迎えに来てくれると思いきや、彼氏のクリスと一緒だった。ダニちゃんの彼氏に初対面、緊張したけれどもとてもいい人だった。見かけはロン毛だし、両耳にはおびただしいピアスの数だし、ふくらはぎにはでかでかとタトゥーを入れていて、こいつはヘビメタ野郎か?って思ったけど、ごく普通の話しやすいいい青年だった。出会ったきっかけを聞くと、彼はダニエルの従姉妹の旦那様の親友だったのだそうだ。

さて、ダニエルが住む郊外までは車で約1時間だ。彼女の車をクリスが運転していたが、高速道路をビュンビュン飛ばす。こえーのなんの、それでも2人は運転中にも手なんか握り合ったりしてラブラブ。コノヤロウ!

そして夕食。シカゴ名物ディープ・ディッシュ・ピザは食べたか聞かれる。数日前に食べたばかりだけど、あれならもう一度食べてみたいと思ったのでピザに決定。どこのレストランに行ったのか忘れたけど、この間の店よりもピザが大きいし、おいしいのだ。ピザの前にチーズとホウレンソウにパン粉をつけて揚げたものを食べたので、苦しいくらいにお腹いっぱいになってしまった。

「明日は何がしたい?」
とダニエルが聞いた。ダニエルはホリデーから帰ったばかりで仕事だ。私は
「ゆっくり眠って休みたい」
と答えた。シカゴに来て以来、ゆっくり休むこともなく出歩いていたので、実はとても疲れていたのだ。
「退屈じゃない?」
とダニちゃん。いや、退屈したいのよ。何もしたくないのよ。ってことで、翌日は私の休息日に決定。これは正解だったのだ。

食事が終ってダニエルのアパートへ。まあ、なんてきれいなお部屋。部屋のあちこちには日本で買ったもの、日本での写真なんかが飾られていた。私が2年前にバースデーに贈った絵も飾られていた。愛犬のアシーナにも初対面。人懐っこくてかわいくて、犬が苦手な私でも大丈夫だった。久しぶりに静かな場所で眠った夜だった。

●休息日●

9月7日、アメリカ旅行8日目。ダニエル宅に宿泊するが、早朝、体に何か重いものを感じる。息ができない。恐る恐る目を開いてみると…ダニエルの愛犬アシーナが私の上に乗っているのだ。く、苦しい。パグとビーグルのかけあわせの小型犬といえども、ずっしり重い。お、お願い、降りて~とアシーナを手で押しのけていると、それに気づいたダニエルがやってきて、ごめんね~と言いながらアシーナを抱えていった。

私の眠っている間にダニエルは仕事に行った。アシーナはクリスのところに預けられ、私は部屋に一人。起き上がった瞬間、くしゃみを連発、鼻水が止まらない。どうも風邪を引いたみたいだ。というのも、シカゴは残暑が厳しく、ホステルもダニエルのところも夜の間中冷房入れっぱなしだったのだ。クーラーを入れたまま寝ることに慣れていない上に、アメリカに来て以来ゆっくり休んでいなかったので、体調を崩してしまったのだ。嫌だなぁ、旅行中に体調を壊すだなんて。

というわけで、カバンの中にあったシリアルバーを食べ、日本から持ってきた風邪薬を飲んで昼まで寝た。前の晩にビデオやDVDの操作方法を聞いていたので、午後から『ラスト・サムライ』なんか見たりする。日本で見るのとアメリカで見るのとではどう違うかなって思ったけど、感想は全く同じ。

そしてダニエル帰宅。クリスの家にアシーナを迎えに行って、その近くで夕飯を食べようってことになった。体調は悪かったけど、ダニエルと過ごせる時間は長くはないので行くことにした。クリスのアパートは車で15分くらいのところにある。シカゴからメトラ(郊外へ行く電車)で50分ほどのパラタイン(Palatine)という小さな町だ。アパートから駅周辺を3人でアシーナを散歩させる。小さな町といっても、素敵なレストランが立ち並び、駅の構内にはスターバックスなんかもあったりするのだ。

散歩の後で食事。アメリカ料理のレストラン、EMMET'Sへ行く。クリスが前菜に頼んだディップはすごくおいしかった。アーティーチョークとブロッコリーのクリームソースにガーリックブレッドをつけて食べた。これでお腹が落ち着いてしまった。

私が注文したのはサンドイッチ。体調が悪いので何か軽いものをと思ったのだけど、出てきたものを見て沈黙。サンドイッチのパンにはバジルの入ったオリーブオイルがしっかりしみこんでいて、ハムにスイスチーズに…。それが2切れ。1切れがでかいのだ。おまけにクリームソースのマカロニパスタ、からりと揚がったポテトチップスまでついてきて、すごい量だ。他の食事を注文したダニエルとクリス、それをぺろりと食べるのだから、アメリカ人の胃袋ってすごい。私はサンドイッチを1切れも食べられなかったのに。

アメリカやカナダのいいところは、残った食事を持って買えるパックをくれるところだ。これは日本でも時々やっているけど、友だちに恥ずかしがられる。私の残したものもパックに入れてもらい、自分では食べられないからクリスに持って帰ってもらった。少ししか食べていないのだけど、体調が悪かったのもあって、夜中に気持ち悪くなって全部吐いてしまったのだ。こうして、シカゴ最後の晩は更けていった。

ダニエルとクリスと過ごしたのは短い間だったけど、2人にはとてもお世話になった。とても素敵なカップルだ。11月からは一緒に暮らすそうなので、何かお祝いを贈ろうと考えている。何がいいかなあ。

ダニエルとレストランEMMET'Sにて

りすダニエルの家の前にリスが…


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